第7章 生命保険と税・相続

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Ⅰ.生命保険と税


1.生命保険料と税金

(1)生命保険料控除

①生命保険料控除の仕組み・・・支払保険料に応じて一定の額がその年の契約者(保険料負担者)の所得から控除されます。生命保険料控除を受けるとその分だけ課税対象額が少なくなり、所得税と住民税が軽減されます。

・生命保険料控除の種類・・・生命保険料控除は、平成23年12月以前の締結契約(以下「旧契約」)は「一般生命保険料」と「個人年金保険料(税制適格特約付加契約)」の2つ、平成24年1月以後の締結契約(以下「新契約」)「一般生命保険料」「個人年金保険料」「介護医療保険料」の3つに区分され、それぞれの保険料区分ごとに控除額が計算されます。

・生命保険料控除の適用・・・民間の生命保険契約の他、JA共済の生命共済・年金共済、また、こくみん共済 coopの「こくみん共済」や各都道府県民共済の掛金などにも適用されます。


②生命保険料控除の対象となる契約・・・保険金などの受取人が、「契約者本人または配偶者もしくはその他の親族」となっている契約。「個人年金保険料税制適格特約」を付加した個人年金保険契約の保険料(「個人年金保険料」)および「介護(費用)保障または医療(費用)保障を内容とする主契約または特約にかかる支払保険料等(「介護医療保険料」)は、それぞれ、一般生命保険料とは別枠で控除の対象です。

・控除の対象から除外されるもの・・・財形貯蓄制度に利用される保険(財形貯蓄積立保険、財形住宅貯蓄積立保険、財形年金積立保険、財形年金保険)や、保険期間が5年未満の貯蓄保険、団体信用生命保険などは対象から除かれます。

・その他の親族とは・・・六親等内の血族と三親等内の姻族(配偶者の血族や血族の配偶者など)で、親族であれば生計を一にしていなくても控除を受けられます。


③生命保険料控除の対象となる保険料・・・その年の1月1日から12月31日までに払い込まれた保険料で、保険料から社員(契約者)配当金を差し引いた金額(正味払込保険料)が対象です。ただし下記の取り扱いがあります。

(ア)払込保険料がそのまま対象となる場合・・・約款上、配当金で保険金を買い増しする場合や、積立(据置)配当で途中引き出しのできない場合。

(イ)月払保険料をまとめて払い込む場合・・・その年の12月分までに該当する金額が、その年に支払った保険料として控除の対象。

(ウ)一時払保険料・・・保険料を支払った年に1回だけ控除の対象。

(エ)前納保険料・・・支払った年において全額を控除の対象とはせず、前納期間中毎年、その年に到来した払込期日に対応する金額が控除の対象。

(オ)(自動)振替貸付・・・正常に保険料の払い込みがされている場合と同様に、控除の対象。

(カ)未払込保険料(延滞保険料)を支払って契約を復活した場合・・・支払いが実際に行われた年にまとめて控除の対象。


④控除される金額

(ア)平成23年12月までの締結契約のみの場合

・所得税・・・「一般生命保険料」および「個人年金保険料」について、それぞれ年間正味払込保険料の100,000円までが対象となり、実際に所得から控除される金額はそれぞれ最高50,000円(合計で最高100,000円)。

・住民税・・・「一般生命保険料」および「個人年金保険料」について、それぞれ年間正味払込保険料の70,000円までが対象となり、実際に所得から控除される金額はそれぞれ最高35,000円(合計で最高70,000円)。

(イ)平成24年1月以降締結契約(内容変更等含む)のみの場合

・所得税・・・「一般生命保険料」「個人年金保険料」「介護医療保険料」について、それぞれ年間正味払込保険料の80,000円までが対象となり、実際に所得から控除される金額はそれぞれ最高40,000円(合計で最高120,000円)。
・住民税・・・「一般生命保険料」「個人年金保険料」「介護医療保険料」について、それぞれ年間正味払込保険料の56,000円までが対象となり、実際に所得から控除される金額はそれぞれ最高28,000円(合計で最高70,000円)。

●所得税の生命保険料控除額
一般生命保険料、個人年金保険料、介護医療保険料共通

すべての控除額合計で最高12万円まで控除可能。

(計算例)

一般生命保険料
正味払込保険料 70,000円-1,000円=69,000円
(69,000円×1/4)+20,000円=37,250円・・・①

個人年金保険料
正味払込保険料 60,000円
(60,000円×1/4)+20,000円=35,000円・・・②

介護医療保険料
正味払込保険料 30,000円-2,000円=28,000円
(28,000円×1/2)+10,000円=24,000円・・・③

生命保険料控除額 ①+②+③=96,250円

●住民税の生命保険料控除額
一般生命保険料、個人年金保険料、介護医療保険料共通

すべての控除額合計で最高7万円まで控除可能。

(ウ)両契約(ア)と(イ)に加入している場合
新制度が適用される契約(前記(イ)。「新契約」)、旧制度が適用される契約(前記(ア)。「旧契約」)の双方に加入している場合、一般生命保険料控除・個人年金保険料控除については、それぞれにつき下記のイ、ロ、ハのいずれかを選択できます。

イ 旧契約に係る控除額(所得税 最高50,000円 住民税 最高35,000円のみ
ロ 新契約に係る控除額(所得税 最高40,000円 住民税 最高28,000円のみ
ハ 新契約と旧契約の双方について保険料控除の適用を受ける場合の控除額
(ただし、新契約の控除限度額が適用)
介護医療保険料控除については、新契約に係る控除額を適用します。
一般生命保険料、個人年金保険料、介護医療保険料の控除額の合計の限度額新契約と同額。


(2)生命保険料控除を受けるための手続き

①申告の時期

(ア)一般的な給与所得者の場合・・・毎年12月の給与の支払われる前日までに、「給与所得者の保険料控除申告書」を勤務先に提出して、年末調整で控除を受けます。

(イ)申告納税者(事業所得者など)の場合・・・「確定申告書」を原則として翌年の2月16日から3月15日までに税務署に提出して控除を受けます。


②払込保険料の証明方法・・・「生命保険料控除証明書」または「保険料領収証」を所定の申告書に添付することが必要です。

・団体扱契約などの場合・・・「給与所得者の保険料控除証明書」の所定欄に団体の担当者の確認印があればよいです。


③住民税の保険料控除の手続き

・給与所得者の場合・・・雇用主が「給与支払報告書」を市(区)町村長に提出することが義務付けられており、「給与所得者の保険料控除申告書」を提出していれば、自動的に控除が受けられます。

・申告納税者の場合・・・「確定申告書」を提出していれば、住民税の申告書も提出されたものとみなされるため、あらためて住民税の申告をしなくても控除が受けられます。


保険金・年金・給付金と税金(個人契約の場合)

(1)死亡保険金と税金

①相続税の課税対象となる場合

(ア)相続人が受け取った場合・・・契約者(保険料負担者)と被保険者が同一人の場合の死亡保険金は相続税の課税対象となりますが、死亡保険金を被保険者の相続人が受け取った場合、税法上一定の金額が非課税となる取り扱いが認められています。

・受取金額がこの非課税限度額を超える場合・・・その超過額が他の財産と合算されて相続税の課税対象となります。
※死亡保険金の非課税限度額=500万円×法定相続人の数

(イ)相続人以外の人が受け取った場合・・・寄贈によってもらったものとみなされ、非課税の取り扱いはありません。

②所得税の課税対象となる場合・・・契約者(保険料負担者)と受取人が同一人の場合の死亡保険金は、一時所得として所得税の課税対象となります。

●贈与税の課税対象額=贈与額ー基礎控除額
・基礎控除の額は、贈与額が110万円まではその全額、110万円を超える場合は一律110万円。

●「相続時精算課税制度」が適用できる場合・・・父母または祖父母(被相続人)から子である推定相続人または孫に財産を贈与した場合、贈与税相当額を相続税額から控除することができる「相続時精算課税制度」があります。この制度は、贈与税がかかる生命保険金についても適用することができます。


(2)満期保険金と税金

①所得税の課税対象となる場合・・・契約者(保険契約者)と受取人が同一人の場合の満期保険金は、一時所得として所得税の課税対象。計算方法は、死亡保険金の場合と同じです。
・保険期間5年以下の一時払養老保険など・・・満期保険金などと既払込保険料との差額に対して利子所得同様の課税方式がとられ、一律20%の源泉分離課税となります。

①贈与税の課税対象となる場合・・・契約者(保険料負担者)以外の人が、満期保険金を受け取った場合は、贈与税の課税対象。計算方法は、死亡保険金の場合と同様に贈与税の課税対象額=贈与額ー基礎控除額となります。


(3)年金・死亡給付金と税金

①年金と税金・・・個人が年金を受け取る場合、毎年支払いを受ける年金はすべて雑所得として所得税の課税対象。ただし、契約者と年金受取人が異なる場合には、年金支払い開始時に年金に対しても所得税(雑所得)がかかります。

②死亡給付金と税金・・・年金の支払い開始前に被保険者が死亡し、死亡給付金が支払われると、死亡保険金と同様、契約者(保険料負担者)・受取人の関係によって、相続税・所得税(一時所得)・贈与税のいずれかが課税対象になります。

(ア)相続税の課税対象となる場合・・・契約者(保険料負担者)と被保険者が同一人の保険契約では、死亡給付金は相続税の課税対象となります。被保険者の相続人が受け取った場合は、税法上一定の金額が非課税となります。

(イ)所得税の課税対象となる場合・・・契約者(保険料負担者)と死亡給付金受取人が同一人の保険契約では、死亡給付金は一時所得として所得税の課税対象となります。

(ウ)贈与税の課税対象となる場合・・・契約者(保険料負担者)と被保険者が異なり、契約者以外の人が死亡給付金を受け取る保険契約では、死亡給付金は贈与税の課税対象となります。


(4)給付金と税金

身体の傷害などを原因として支払いを受ける高度障害保険金(給付金)、障害給付金、入院給付金などは、被保険者本人、配偶者、直系血族、あるいは生計を一にするその他の親族が受け取る場合は非課税となります。


(5)保険金・年金と税金のまとめ

●保険金と税金


●年金と税金


(6)保険金課税と私たちの役割

●契約形態による保険金課税・・・生命保険の保険金は、所得税・相続税・贈与税のいずれかの課税対象となりますが、その税額は契約形態(契約者、被保険者、受取人の関係)により大きく違ってきます。

●満期保険金を受け取る場合・・・所得税か贈与税の課税対象になります。贈与税よりも税率の低い所得税(一時所得)になるように、受取人は契約者と同一にしたほうが、一般に、税法上は有利となります。

●「相続時精算課税制度」を適用できるケースにおいては、本制度を選択すると、非課税限度額は2,500万円となり、それを超えた部分に課税される贈与税を相続税から控除することができます。その結果、贈与の時点で支払う税額が少額もしくは0という場合もあります。

●死亡保険金を受け取る場合・・・所得税・贈与税・相続税のいずれかの課税対象となります。相続税には死亡保険金の非課税の取り扱い、基礎控除、配偶者の税額軽減などがあり、死亡保険金は相続税の課税対象となるように契約者・被保険者を同一とし、受取人は相続人としたほうが、一般に、税法上は有利となります。

●相続税対象の形態にできない場合・・・保険種類や契約者の都合などにより、死亡保険金を相続税対象の形態にできない場合は、満期保険金の場合と同様、贈与税対象とするより所得税対象としたほうが、一般に、税法上は有利となります。


生命保険と相続

相続の法律

(1)相続

死亡した人(被相続人)の財産を、他の人が引き継ぐことを相続といいます。被相続人は、原則として遺留分(後述)を侵さない限り、遺言で相続財産を自由に処分できます。


(2)遺言と遺留分

①遺言・・・私有財産制度の下では、自分の財産の処分は、本人の自由意思に委ねられています。法律(民法)は、遺言の制度を設け、法定相続の規定に優先することを定めています。
・遺贈・・・遺言により、ある特定の人に財産を与えること。
・遺言の方式・・・間違いなく本人の遺言であることがはっきりわかるものでなければなりません。したがって法律で厳格な方式が定められています。

②遺留分・・・法律(民法)は、遺言の内容にかかわらず、一定範囲の相続人に対し、最低限相続できる財産の割合を定めています。これを遺留分といいます。

・相続人と遺留分


・各相続人の遺留分・・・次の項目の法定相続の相続割合によります。ただし、兄弟姉妹は法定相続人であっても遺留分の権利はありません。


(3)法定相続による相続順位と相続分

民法で、相続人となる者の範囲や順位を定めた制度を法定相続といいます。民法で定めた相続分を法定相続分といいます。
●相続人の範囲と順位

①配偶者は常に相続人。ただし、ここでいう配偶者とは婚姻届出済の夫婦のいずれか一方を指し、内縁の場合は含みません。
②子どもがいる場合は、子どもと配偶者が相続人(第1順位)
③子どもや孫がいない場合は、親(直系尊属)と配偶者が相続人(第2順位)
④子どもや孫、親などのいずれもいない場合は、兄弟姉妹と配偶者が相続人(第3順位)
⑤配偶者以外の同順位の相続人が2人以上いる場合、その相続人の相続分は原則として均等。

●家族構成別の相続割合


(4)代襲(だいしゅう)相続

相続人となるはずであった子・兄弟姉妹が相続開始のときにすでに死亡していた場合、その者の子ども(被相続人の孫・甥・姪)が代わって相続することをいいます。


(5)相続の承認と放棄

相続は被相続人が死亡したときに開始されますが、相続人は、被相続人の財産上の権利・義務を相続するかしないかを自由に決めることができます。相続人が相続を受ける意思を表示することを相続の承認といい、相続を拒否する意思を表示することを相続の放棄といいます。

①相続の承認

(ア)単純承認・・・被相続人の財産上の権利義務を、全部受け継ぐ方法。
・債務(借金など)が相続財産より多いとき・・・相続人の自己の財産から弁済しなければなりません。
・手続き・・・相続人が相続の開始があったことを知ったときから3カ月間、何の手続きもしなければ、単純承認したことになります。

(イ)限定承認・・・相続財産の範囲内で債務を弁済する方法。
・債務の弁済・・・債務が相続財産を上回っても、相続人の自己の財産から債務を弁済する必要はありません。
・手続き・・・相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内に、全相続人が共同で家庭裁判所へ申述します。

②相続の放棄・・・相続の権利を有する相続人が、相続を拒否する行為。
・手続き・・・相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内に家庭裁判所へ申述することが必要。全相続人が共同で行う必要はなく、1人でも、また数人が共同で行うこともできます。
・放棄が成立すると・・・その相続人は、最初から相続人でなかったとみなされ、その人がいないものとして相続順位や相続分を決定します。


(6)遺産の分割

相続開始時に、相続人が2人以上いれば、遺産は各相続人間の共有となりますが、これを具体的に分割するには次の3つの方法があります。
①遺言による分割・・・遺言があるときはこれにしたがって分割します。
②各相続人による協議分割・・・遺言のないときは各相続人が協議して分割します。
③家庭裁判所による分割の調停・審判・・・分割の協議が調わないときは、家庭裁判所に分割の調停や審判を求めることができます。

●法定相続分と実際の遺産分割・・・相続人が財産の分割をする割合の目安として法律(民法)において「法定相続分」が定められていますが、法定相続分どおりに遺産分割する必要はなく、相続人の話し合いにより自由に分割することができます。

●代償分割・・・農地や家屋などを相続する場合には、たとえば、相続人の1人が代表して財産を継承し、その人が他の相続人に対して、自分の財産から代償として相応の現金や別の土地などを贈与する「代償分割」があります。

●寄与分制度・・・被相続人の財産の維持・増加に特に貢献した相続人については寄与分として、遺産のうちから貢献に応じた額を優先的に取得できる寄与分制度があります。


2.相続税

●相続税・・・人の死亡によりその相続人などが取得した財産(遺産)に対して課せられる税金。原則として相続があったことを知った日の翌日から10カ月以内に現金で納めなければなりません。


(1)本来の相続財産

相続や遺贈で取得した財産となるものには、次のようなものがあります。
・動産・・・現金、預貯金、有価証券など
・不動産・・・土地、家屋・工場など
・不動産上にある権利・・・地上権、借地権など
・その他・・・生命保険契約*に関する権利、年金(定期金)に関する権利、「のれん」「商標」などの営業権など。
(*被相続人が契約者(=保険料負担者)で、相続開始のときにまだ保険金の支払事由が発生していない生命保険契約のこと)


(2)みなし相続財産

●課税対象となる財産・・・現金・土地などの本来の相続財産の他に、相続(または遺贈)により取得した財産ではないですが、実質的にこれと同様な経済効果をもつ死亡保険金や死亡退職金なども含まれます。これを「みなし相続財産」といいます。

・死亡保険金・・・被相続人の死亡により支払われる死亡保険金(ただし、被相続人の負担した保険料に対する部分に限る)。
・退職手当金(死亡退職金)、功労金。


(3)相続税の主な控除

①相続税の基礎控除・・・一定の金額が「基礎控除」として正味の遺産から差し引かれます。
相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

②配偶者に対する税額軽減・・・税額控除として「その配偶者に割り当てられた税額から正味の遺産の法定相続分か1億6千万円のいずれか大きいほうに対応する税額を控除する」という取り扱いがあります。

●具体的には・・・配偶者が相続した財産が、正味の遺産の法定相続分までのときはその額に関わらず、配偶者には相続税はかかりません。また、法定相続分を超えていても、1億6千万円までなら配偶者に相続税はかかりません。


>>第8章 お客さまニーズへの対応

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