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第3章 生命保険募集時におけるコンプライアンス

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Ⅰ.コンプライアンスと基本的姿勢

1.コンプライアンスの重要性

●コンプライアンス・・・一般に「法令等の遵守」と訳されます。多くの企業では、法令や社内ルールだけでなく、社会的規範や企業倫理を守るということも含めて用います。


●信頼確保の原点・・・生命保険募集人を含む生命保険会社の正しい行動・お客さま対応が、企業の社会的な信頼確保の原点を成しています。


●形のみえない商品・・・生命保険はその特質から内容が複雑で、「形のみえない商品」であり、お客さまの潜在ニーズを掘り起こしながら提案し、納得いただいたうえで契約締結へ結びついていきます。そのため、「正しい説明(説明義務)」、「正しい情報提供」、そして「確かなアフターサービスの提供」を欠かすことはできません。


●お客さま本位の行動・・・法令や社内ルールなどを十分に理解し、遵守します。正しい知識を備え、社会的な倫理・良識のもとお客さま本位の行動を実践していくことが、真にお客さまから求められています。


2.日常業務での基本的な姿勢

●守るべき法律・ルール・・・生命保険募集人の活動において守らなくてはならない法律には、保険会社や生命保険募集人に対する規制・監督のあり方を規定する保険業法に加え、民法、商法、消費者契約法、金融サービス提供法、金融商品取引法、個人情報保護法、犯罪収益移転防止法などがあり、さらに保険会社と契約者との間の契約ルールを規定する保険法があります。また、生命保険会社や保険代理店の諸規定も重要なルールです。


●保険契約の募集にあたって・・・正しい知識をもとにお客さまにわかりやすい説明をするとともに、各関連法規上の正しい活動を実践していかなければなりません。


●違反した場合・・・生命保険会社や保険代理店、生命保険募集人が厳しい処分を受けることに加え、大切なお客さまや社会からの信頼を失うことにつながります。


●日常業務の中で・・・それぞれの法律や社内ルール等の意味・内容を十分に把握し、常にお客さまの立場に立って「正しい説明(説明義務)」、「正しい情報提供」、「確かなアフターサービスの提供」を心がけて活動することが必要です。


Ⅱ.生命保険募集人が遵守すべき法令等

1.保険業法

●保険業全般に関する基本的な法律で、保険業を行う者の健全で適切な運営や公正な保険募集等について定めています。


●生命保険募集人については、その使命を十分に遂行し、正しい販売活動ができるように、その守るべきルールを具体的に定め、契約者等の保護を図っています。


(1)生命保険募集人に関する制限(募集人登録)


●募集人登録・・・生命保険の募集を行う者は、所定の教育・研修を受け、内閣総理大臣の登録を受ける必要があります。登録を受けていない者は保険募集を行うことができません。


●留意事項・・・契約者等の保護を図るため、A・B両社の生命保険募集人として登録すること(二重登録)、また、原則として、2社以上の商品の保険募集(乗合募集)を行うこともできません。


(2)権限の明示

●お客さまへ明示する事項・・・保険募集を行う際に、生命保険募集人の所属生命保険会社等、生命保険募集人の商号・名称または氏名の他、保険契約締結に関して「媒介」をするのか、「代理」をするのかを明示しなければなりません。


●「媒介」・・・契約申込みの勧誘ができるだけで、契約の成立には生命保険会社の承諾を必要とします。


●「代理」・・・生命保険募集人が承諾すればその契約が成立し、その効果が生命保険会社に帰属します。


(3)情報提供義務

●情報提供・・・保険募集を行う際に、保険契約者・被保険者が保険契約の締結または加入の適否を判断するために必要な情報の提供を行い、お客さまから「契約概要」および「注意喚起情報」を記載した書面の記載事項を了知した旨の確認をいただきます。


①お客さまが保険商品の内容を理解するために必要な情報(契約概要)


②お客さまに対して注意喚起すべき情報(注意喚起情報)


③その他の保険契約等に参考となるべき情報


(4)意向把握・確認義務

●意向把握・確認・・・保険募集を行う際に、お客さま意向の把握、当該意向に沿った保険プランの提案、当該意向と当該プランの対応関係についての説明、当該意向とお客さまの最終的な意向の比較と相違点の確認を行います。

①どのような分野の保障を望んでいるか

②貯蓄部分を必要としているか

③保障期間、保険料、保険金額に関する範囲の希望、優先する事項がある場合はその旨


●意向把握の方法
①保険金額や保険料を含めたお客さま向けの特別プランを説明する前に、たとえばアンケートなどによりそのお客さま意向を事前に把握する方法

②性別や年齢等のお客さまの属性や生活環境等にもとづいてお客さま意向を推定(把握)する方法


(5)生命保険募集人に対する体制整備義務

●体制整備義務・・・保険募集に関する業務について、「保険会社に課されている体制整備」に準じた対応を行うことが必要です。


●求められる法令上の対応

①保険募集の業務の適切な運営を確保するための社内規定等を策定し、社内規則等にもとづいた適正な業務運営を確保するための研修を実施

②個人情報の取り扱いに関する社内規則を策定

③保険募集の業務(保険募集の業務に密接に関連する業務を含む)を委託する場合、委託業務の的確な遂行を確保するための委託先の管理

④生命保険会社のために保険契約の締結の代理または媒介を行う立場を誤認させるような表示を行わない


●比較推奨販売

ア.乗合代理店が扱う商品の中から、お客さま意向にもとづき比較可能な商品の概要を明示し、お客さまの求めに応じて商品内容を説明しているか

イ.特定の商品を提示・推奨する際には、当該掲示・推奨理由をわかりやすく説明することとしているか。乗合代理店の判断により、さらに絞り込みを行ったうえで、商品を掲示・推奨する場合には、商品特性や保険料水準などの客観的な基準や理由等について、説明を行っているか

ウ.客観的な基準や理由等にもとづくことなく、商品を絞り込みまたは特定の商品をお客さまに提示・推奨する場合には、たとえば、特定の生命保険会社の商品を提示する際に、当該代理店が特定の生命保険会社の系列代理店である旨を示すなど、その基準や理由等を説明しているか

エ.商品の提示・推奨や乗合代理店の立場の表示等を適切に行うための措置について、社内規則等において定めたうえで、定期的かつ必要に応じて、その実施状況を確認・検証する態勢が構築されているか


(6)生命保険募集人に対する体制整備義務

●禁止行為・・・お客さまが正しい判断をするのに妨げとなるような募集行為は、保険業法上禁止されています。


(7)違法行為と罰則

●保険募集に関して著しく不適当な行為・・・上記以外の契約者保護に欠ける行為。契約申込書等の不正な取り扱い(無面接契約、代筆、代印)、保険料など金銭等の不適正な取り扱い(費消・流用等)、成績付替え・代行募集、保険本来の趣旨を逸脱するような募集行為(短期解約を前提とした契約等)などが該当し、当該行為および上記(6)保険募集に関する禁止行為は、保険業法だけでなく、刑法等他の法律に抵触するおそれもあります。


●ルールに違反した場合・・・行政処分(一定期間の業務停止命令や生命保険募集人登録の取消処分)や司法処分(懲役もしくは罰金または両者の併科)を受けることになり、所属会社の社内規定等によっても処分されることになります。


2.消費者契約法

●消費者保護を目的として消費者と事業者との間の契約ルールについて定めた法律。2001年(平成13年)4月から施行されました。

●保険契約も対象・・・消費者契約の対象を広くしており、保険契約もその対象となります。

●申込み・承諾の意思表示の取消し・・・事業者の不適切な勧誘方法によって、お客さまが誤認または困惑して締結した契約については、所定の期間内であれば、その契約の申込みまたはその承諾の意思表示を取り消すことができます。
・誤認・・・重要事項について事実と異なることを告げる行為などが原因
・困惑・・・お客さまの意思に反して退去しない行為や社会経験の乏しい消費者に対し不安をあおる告知をする行為などが原因

●過量販売・・・消費者契約の目的となる物品やサービス等がお客さまの通常必要とされる分量等を著しく超えることを知りながら勧誘した場合(過量販売)にも、お客さまは契約を取り消すことができます。

●取消し等のできる期間・・・お客さまが誤認に気がついたときや困惑の状況から解放されたときなどから原則1年以内で、契約締結時から原則5年以内。


3.金融サービスの提供に関する法律(金融サービス提供法)

●お客さまと金融商品販売業者との間のトラブルを未然に防ぐことを目的に、事業者の重要な事項の説明義務等を定めた法律。2001年(平成13年)4月から施行されました。

●金融商品販売業者・・・生命保険会社、保険代理店が含まれます。

●損害賠償責任・・・リスク(市場リスク・信用リスク)に関する重要な事項の説明を怠ったことによりお客さまが損害を被った場合、金融商品販売業者が損害賠償責任を負います。

●適合性の原則・・・お客さまの知識・経験・財産の状況や取引の目的に照らしてふさわしい説明をしなければなりません。

●勧誘方針・・・金融商品販売業者は、金融商品を販売するための勧誘方針を策定し、公表しなければなりません。
【注】金融商品販売法は改正により「金融サービスの提供に関する法律(金融サービス提供法)」に名称が変わるとともに、多種多様な商品・サービスをワンストップで提供する「金融サービス仲介業」が創設されるなどした(令和3年11月1日施行)。


4.金融商品取引法

●国民経済の健全な発展と投資者の保護に資することを目的に、投資性の強い金融商品を包括的・横断的に幅広く対象とした法律。2007年(平成19年)9月から施行されました。

●特定保険契約・・・これに伴い保険業法等の一部が改正され、金利、通貨の価格、金融商品市場の相場等の変動によってお客さまに損失が発生するおそれがある契約は「特定保険契約」と定義されました。

●保険業法への準用・・・特定保険契約の募集にあたって、保険業法では金融商品取引法の規制の一部を準用しています。

●販売ルール・・・お客さまの知識・経験・財産の状況および契約締結の目的に照らして不適当な勧誘を行わないこと(適合性の原則)に加え、商品の特徴や市場リスクに関する留意点、お客さまが負担する費用等が記載された契約締結前交付書面をあらかじめ交付することや、虚偽記載の禁止等を義務づけています。


5.個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)

●企業(個人情報取扱業者)が、業務遂行にあたり適正に個人情報を取り扱うためのルールを定めた法律。2005年(平成17年)4月から全面施行されました。

●その後、情報通信技術の発展や事業活動のグローバル化等の急速な環境変化により、当初は想定されなかったようなパーソナルデータの利活用が可能となったことを踏まえ、「定義の明確化」「個人情報の適正な活用・流通の確保」「グローバル化への対応」等を目的として、改正個人情報保護法を2017年(平成29年)5月から全面施行されました。

●さらに、個人情報に対する意識の高まり、技術革新を踏まえた保護と利活用のバランス、外国への越境データの流通増大に伴う新たなリスクへの対応等の観点から、さらに改正が行われています(2022年(令和4年)4月施行)。


●個人情報取扱業者に課せられた義務

①個人情報の取得・利用時の義務

●利用目的の特定・・・利用目的を特定する。業務上不要な個人情報は取得しない。

●利用目的による制限・・・利用目的の範囲内で利用する。利用目的以外に利用しない。

●不適正な利用の禁止・・・違法・不当な行為を助長・誘発するおそれがある方法により個人情報を利用しない。

●適正な取得・・・適正に取得する。偽り、その他不正な手段で取得しない。原則として、あらかじめ本人の同意を得ないで要配慮個人情報を取得しない。

●取得時の利用目的の通知等・・・取得する際は、利用目的を公表または通知する。

●第三者提供を受ける際の確認等・・・第三者から個人データの提供を受ける際は、提供者の氏名・提供者が当該個人データを取得した経緯等を確認したうえ、提供内容等の記録を作成、保存する。


②個人情報を適切・安全に管理する義務

●安全管理措置・・・安全に管理するため、必要かつ適切な措置を講じる。

●従業員の監督・・・従業者、業務の委託先を監督する。

●正確性の確保・・・利用目的の達成に必要な範囲で、正確かつ最新に保つ。

●漏えい等の報告等・・・個人情報の漏えい等の発生時は、原則として個人情報保護委員会に報告し、本人に通知する。

●第三者提供の制限・・・本人の同意なしで、第三者に提供(漏えい)しない。

●第三者提供に係る記録の作成等・・・第三者に個人データを提供した際は、個人データの提供年月日や提供先等の記録を作成し、一定期間、保存する。


③本人からの求めに対応する義務

●開示、訂正、利用停止等・・・本人からの求めに応じて、開示・訂正・利用停止等を行う。

●苦情対応・・・苦情の申し出に対し、適切かつ迅速な対応に努める。

●個人情報保護委員会の勧告・命令等・・・個人情報取扱事業者がこの義務規定に反した場合、個人情報保護委員会は必要に応じて、勧告・命令等(業務改善命令や業務停止命令等の可能性)の措置をとる。


6.犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)

●犯罪による収益が組織的な犯罪を助長するために使用されたり、健全な経済活動を阻害する事業に移転されたりするのを防ぐことを目的とした法律。2008年(平成20年)3月から完全施行されました。

●特定事業者の義務・・・お客さまの本人特定事項等の確認や記録の作成・保存、マネー・ローンダリングなどの疑わしい取引等の届出。

①取引時確認が必要となる場合・・・生命保険契約の締結、契約者貸付、契約者変更、満期保険金・年金・解約返戻金の支払い等の取引発生時や、200万円超の大口現金取引時、10万円超の現金送金時等。

②取引時確認の方法

・お客さまが個人の場合・・・お客さまに運転免許証、各種健康保険証や年金手帳等、マイナンバーカード(個人番号カード)、印鑑登録証明書などの公的証明書を掲示または送付いただき、氏名・生年月日・住居の確認を行います。

・お客さまが法人の場合・・・法人の名称・本店等の所在地・事業内容等と、実際に手続きをする担当者本人の双方の確認が必要。法人の確認は、原則、登記事項証明書や印鑑登録証明書等の掲示または送付により行います。担当者本人の確認は、個人の場合と同様の確認の他に、委任状の提示を求めることや直接法人へ電話することによる確認等が必要です。

・お客さまが代理人を利用する場合・・・お客さまと実際に手続きをする担当者(代理人)本人の双方の確認が必要です。

●特定事業者の免責・・・お客さまが取引時確認に応じない間、お客さまは生命保険会社等の特定事業者に契約上の義務の履行を要求できません。

●罰則・・・お客さまが取引時確認に際し、本人特定事項を隠ぺいする目的で虚偽の申告を行った場合には、刑事罰の対象となります。


7.保険法

●2010年(平成22年)4月1日から、保険会社と契約者との間の契約ルールを定めた「保険法」が施行されました。従来の商法の規定を、適用範囲を拡大し、保険契約者等の保護を目的として全面的に見直し、独立した法律となりました。

●保険法の規定・・・商法では規定していなかった、傷害疾病保険などの第三分野の保険契約に関する規定が設けられました。

●告知義務・・・商法では、告知する事項を契約者等が判断して告知する義務(自発的申告義務)と規定されていたのに対し、保険法では、保険会社が質問したことだけに答えればよいという義務(質問応答義務)に変更されました。

●保険会社の義務・・・保険契約の解除の取り扱い、保険金等の支払いに関する保険会社の義務などについて規定されました。

●適用対象・・・保険法は各種共済も対象に含めています。


8.その他の販売ルール

●変額保険の販売資格・・・変額保険および変額個人年金保険を販売するためには、一定の要件を満たす生命保険募集人が、「変額保険販売資格者試験」に合格し、生命保険協会に登録されることが必要です。

●外貨建保険の販売資格・・・外貨建保険を販売するためには、一定の要件を満たす生命保険募集人が、「外貨建保険販売資格試験」に合格し、生命保険協会に登録されることが必要です。

●銀行等による保険商品の販売窓口・・・2007年(平成19年)12月から全商品の取り扱いが可能。保険商品の複雑性・特殊性や銀行等の業務の特性から、保険募集時のさらなる契約者保護を図るため、募集にあたっての各種の「弊害防止措置」が設けられています。


Ⅲ.法令上の禁止行為

1.保険業法第300条

●目的・・・保険契約者の保護や公正な保険募集を図るため。
●内容・・・保険契約の締結または保険募集に関して、保険会社や保険募集に従事する者(生命保険募集人・損害保険募集人・保険代理店や保険中立人など)の一定の行為を禁止している規定。

2.禁止行為の具体的な事例

●保険業法第300条 禁止行為の具体的な事例

【虚偽の説明・保険契約者または被保険者の判断に影響を及ぼすこととなる重要な事項の不説明(不完全な説明)】

■内容
・生命保険契約に関する事項について事実と異なる説明をすること
・重要な事項について説明を省略したり都合の良い部分のみを説明したりすること
■具体的な事例
●虚偽の説明となる事例
・解約返戻金について「いつ解約しても払込保険料相当額が返還されます」と事実と異なる説明をした。
・一定期間で定期保険特約が終了するのに「一生涯高額保障があります」と説明した。
・実際は支払対象とならない手術がある特約について「手術給付金は、どのような手術を受けられても支払いの対象になります」と説明した。
・契約後一定期間の免責期間がある保険について「契約締結後なら、いつでも保険金を支払います」と説明した。


【告知・診査に関する禁止行為】

■内容
・契約者または被保険者が生命保険会社に告知を行うにあたって、虚偽のことを告げるようにすすめること(虚偽告知教唆)
・同様に事実を告げるのを妨げること(告知妨害)、事実を告げないようにすすめること(不告知教唆)
■具体的な事例
●虚偽告知教唆となる事例
・危険職種にあたる職業のお客さまに、加入制限があるので制限のない他の職種を告知するようにすすめた。
●告知妨害・不告知教唆となる事例
・被保険者が現在治療を受けているにもかかわらず、「告知書にはそのことを記載しないでください」とすすめた。
●(その他)
・お客さまの告知書の代筆や告知内容の書き直しなどの行為は、刑法上の私文書偽造等の罪に問われる可能性もある。


【不適正な乗換募集】

■内容
・契約者や被保険者に対して、不利益となるべき事実を告げずに既契約を消滅させて新契約の申込みをさせたり、新契約の申込みをさせたうえで既契約を消滅させること
■具体的な事例
●不適正な乗換募集となる事例
・お客さまに既契約を解約して新商品に加入いただいたが、乗換により不利益となるべき事実について説明しなかった。
(不利益となるべき事実とは)
・多くの場合、解約返戻金は払込保険料の合計額よりも少額となること、特に契約後短期間で解約した場合は、きわめて少額(ない場合もある)となること。
・特別配当請求権等、一定期間の保険契約継続を条件に発生する配当の請求権等を失う場合があること。
・被保険者の健康状態の悪化によっては、新たな保険契約に加入できない場合があること。
・新たな保険契約では、予定利率が下がる(実質負担増加)ことがあること。


【特別の利益の提供】

■内容
・保険料の割引・割戻や、金品その他特別の利益を提供したりすること
■具体的な事例
●保険料の割引・割戻となる事例
・「保険に加入していただければ、第1回保険料はサービスします」と約束して申込みをいただいた。
・団体の所属員ではない人を関連会社として団体扱の範囲に含め、割引料金の保険料で契約いただいた。
(留意事項)
・金銭だけではなく、適度な物品・サービスを提供する行為も「特別の利益の提供」に該当する。また提供される相手は、契約者・被保険者の配偶者や子ども等、親族も対象となる。


【誤解されるおそれのある比較】

■内容
・他の保険商品の比較の中で、誤解されるおそれのある表示や説明をすること
■具体的な事例
●誤解を招く表示・説明となる事例
・根拠のない数字を示して業界ナンバーワンと表示した。
・保険料を比較した資料を作成し、特定の保険の保険料が安いことのみを強調し、他の保険より優れていると説明した。
(留意事項)
・比較表示を行う場合には、「契約概要」等の書面を用いて、「保険期間」「保障内容」「契約条件」「各種特約」「保険料」「保険料払込方法」「払込保険料と満期保険金の関係」およびお客さま保護の観点から重要な事項を説明し、確認することが必要。また、その内容が参考情報であること、実際の保険料は保険会社に確認のうえ、商品選択する必要があることなどを注意していただく。


【断定的な予測配当等の表示・説明】

■内容
・将来において確実でない事項について断定的な判断を示したり、確実であると誤解されるおそれのある表示・説明を行ったりすること
■具体的な事例
●断定的な予想配当等の表示・説明となる事例
・お客さまから配当の見通しについて質問を受け、「過去の実績から将来も高配当が確保できます」と回答した。
・事実と異なるにもかかわらず、「解約返戻金が払込保険料の合計額を下回ることはありません」と説明した。


【威迫・業務上の地位の不当利用】

■内容
・お客さまを威迫したり、業務上の地位を不当に利用することにより、保険契約の申込みをさせたり、既契約を消滅(解約・失効等)させたりすること
■具体的な事例
●威迫および威迫に類似する行為となる事例
・お客さまに対して威圧的な態度や乱暴な言葉等を使って困惑させ、保険加入を迫った。
・「帰ってほしい」と言っているにもかかわらず、「加入するまで帰りません」と言って、お客さまに保険加入を迫った。
・お客さまが拒絶の意思を明らかにしているにもかかわらず、遅い時間帯に執拗に電話をかけたり、訪問するなどし、保険加入を迫った。
●業務上の地位の不当利用となる事例
・取引先に対して「保険に加入しないなら今後の取引を考え直す」とほのめかして保険に加入させた。
※業務上の優越的な地位を濫用して保険加入の自由を制限することは、不公正な取引方法として、独占禁止法にも違反することになる。


【誹謗・中傷】

■内容
・特定の保険会社の信用・支払能力等に関して誹謗・中傷すること
■具体的な事例
●他社の誹謗・中傷となる事例
・格付けやソルベンシー・マージン比率が掲載されている雑誌記事を使って、特定の保険会社が劣っている不当に強調して話し、他の保険会社の保険商品への加入をすすめた。
(留意事項)
・新聞や雑誌、インターネット上の掲載分等をコピーしてお客さまに配付したりする行為も、誹謗・中傷する行為に該当する場合がある。また、この場合は著作権法上も問題ある。


【保険種類・保険会社の誤認を招く行為】

■内容
・保険の種類や引受保険会社について誤認されるようなことを告げること
■具体的な事例
●誤認を招く行為の事例
・同じ種類の保険ではないもの(養老保険と定期保険など)を、あたかも同じ種類の保険のように比較した資料を作成して説明した。
・提携商品の募集にあたって、引受保険会社や保険代理店としての役割について正確に説明しなかった。
(留意事項)
・複数の保険会社による提携商品の販売や複数の保険会社の商品を取り扱う乗合代理店等の場合は、保険種類や引受保険会社について誤認しないように説明する必要がある。


●その他の不適正な行為

【無断(無面接)契約】

■内容
・対面募集において、契約者・被保険者への面接による本人確認と同意確認をしないこと
■具体的な事例
・契約者だけと面接し、被保険者への説明は契約者に任せ、記入済みの申込書を後日回収した。
※電話・インターネット等による、面接を行わない募集形態もある。


【申込書等の代筆・代印(私文書偽造罪等)】

■内容
・保険契約の申込書等に、契約者・被保険者以外の者が署名・押印すること
■具体的な事例
・契約者・被保険者である夫が留守だったため、妻に申込書を代筆してもらった。
・お客さまの了解を得て印鑑を預かり、お客さまの代わりに申込書やその他必要書類の契約者欄に押印した。
・告知書の記載内容を修正した。
※保険会社によって取り扱いルールが異なる。


【保険料の費消・流用(業務上横領罪等)】

■内容
・保険会社の公金である保険料等を私金と混同して使用すること
■具体的な事例
・夕方お客さまから預かった保険料で、帰宅途中の買い物の支払いを一時的に立て替えた。


【成績付替えや代行募集】

■内容
・実際には募集活動を行っていない生命保険募集人や保険代理店を取扱者としたりすること
■具体的な事例
・自分は成績が足りているので、まだ目標を達成していない他の生命保険募集人を取扱者として契約を締結させた。
※給与や手数料の不正受給に該当する。


【保険本来の趣旨を逸脱する募集活動】

■内容
・法人等の財テク等を主たる目的とした契約や解約を前提とした契約など
■具体的な事例
・昔から付き合いのあるお客さまだったこともあり、保障は不要だと言われたが3カ月だけ続けるという約束で契約を締結してもらった。


Ⅳ.募集時の正しい説明

1.保険契約の内容その他保険契約者等に参考となるべき情報の提供

●保険契約の内容その他保険契約者等に参考となるべき情報・・・「契約概要」および「注意喚起情報」を記載した書面、「ご契約のしおり」等に記載。

●口頭での説明
①「契約概要」「注意喚起情報」を記載した書面を読むことが重要であること
②主な免責事由等、お客さまにとって特に不利益な情報が記載された部分を読むことが重要であること
③特に乗換・転換の場合は、お客さまにとって不利益になる可能性があること

●説明・交付・・・「契約概要」「注意喚起情報」を記載した書面は、契約締結に先立ち、お客さまが当該書面の内容を理解するための十分な時間を確保します。お客さまにとって利益となることだけではなく、不利益となること(デメリット情報)なども、十分理解していただきます。

●了知した旨の確認・・・「契約概要」「注意喚起情報」を記載した書面ならびに「契約締結前交付書面」の記載事項を了知した旨は、保険契約の申込書に、署名・押印していただき確認します。形式的に署名・押印をいただくのではなく、お客さまが理解していないと考えられる場合には、よりわかりやすい説明を行い、十分に理解いただきます。

●保管・・・「契約概要」「注意喚起情報」を記載した書面、「ご契約のしおり―定款・約款」等は、保険証券等とともに保管していただきます。


(1)契約概要・注意喚起情報

●「契約概要」および「注意喚起情報」を記載した書面・・・保険募集等の際、申込みいただく前に必ず交付・説明します。

●「契約概要」・・・保険商品の内容を理解するために必要な情報。商品の仕組み、保障の内容、付加できる特約等の概要、保険金額や保険料に関する事項など。

●「注意喚起情報」・・・契約時や契約後に注意を喚起すべき情報。クーリング・オフ、告知義務の内容、責任開始期、保険金支払等の免責や保険料の支払猶予期間に関する事項など。

●特定保険契約等・・・運用リスクに自己責任が求められるので、契約概要と注意喚起情報で構成される「契約締結前交付書面」に、リスクの内容や負担すべき費用等も重要な事項として記載されています。


(2)ご契約のしおり-定款・約款

●「ご契約のしおり-定款・約款」・・・契約者に提供すべき契約内容に関する基本的な情報、契約の申込みを受けるまでにお客さまに交付します。保険契約者または被保険者の判断に影響を及ぼすこととなる重要な事項などについてはわかりやすく説明します。


(3)外貨建保険・外貨建年金保険

●外貨建保険・外貨建年金保険・・・保険業法上の特定保険契約に該当し、金融商品取引法等の法令も遵守する必要。募集についてその他の保険商品と異なる部分があるので注意が必要。投資経験のないお客さまに対し、その商品特性を十分理解いただかないまま募集は行ってはならない。

①適合性の法則

●適合性の法則・・・外貨建保険・外貨建年金保険などの特定保険契約を募集する際、知識・経験・財産の状況および契約締結の目的等のお客さま情報を収集し、お客さまに合った商品をおすすめする必要があります。

●「契約概要」と「注意喚起情報」について記載した「契約締結前交付書面」の交付等により、保険商品の説明を行います。


②重要事項の説明

●重要事項の説明・・・外国為替相場によっては、保険金等の額が契約時の相場で換算した保険金等の額を下回る場合があること、保険料・保険金等が外貨建てであるため、通常、支払いや受け取りの際に円と外貨の換算手数料が必要となることなど。

●クーリング・オフ・・・円換算払込特約を付加せずに、保険料を商品ごとに生命保険会社が指定する外貨(指定外貨)で払い込んだ後にクーリング・オフを行った場合は、返金は指定通貨で行われます。円換算払込特約を付加して、保険料を円で払い込んだ後にクーリング・オフを行った場合は、送金は円で行われます。

●契約締結前交付書面の交付・・・重要事項については、ご契約いただく前に「契約締結前交付書面」を交付して説明することが必要です。


(4)法人向け保険

●法人向けの保険を募集する際には、保険商品の目的などについてわかりやすく説明するとともに、経理処理や税務について適切に情報を提供します。また、「法人向け保険商品にかかる顧客向けの注意喚起事項」を確認いただくよう、注意喚起情報を用いて説明します。

2.お客さまの理解・納得と最終確認

(1)お客さまに応じた説明(適合性の原則)

生命保険の募集にあたっては、お客さまの財産や経済状況、加入目的や生活設計上のあり方、保険等に関する知識や経験によって、適する保険商品や負担すべき保険料の金額等が異なるため、お客さまの目的や状況に応じた商品やサービスの提供をすることに留意する必要があります。

①高齢者の場合

●保険商品の提案や重要な事項等の説明・・・加齢に伴う認知能力等の低下に配慮し、適切かつ十分な説明を行います。高齢のお客さまの場合、「その場では理解したつもりでも、あとで考えると十分に理解していなかった」というケースもあります。

●認知能力の確認・・・自分の意思表示の意味がわかる「意思能力」が十分かどうかを確かめ、不十分と判断される場合は募集を控える必要があります。

●確実な対応・・・問題がない場合でも、身内の方に同席していただき、高齢者本人に十分理解していただいたうえで署名・押印をお願いすることが大切です。契約内容の決定までに、十分に時間をかけてゆっくりと説明し、無理のない確実な対応をするなど、とりわけ慎重な対応が必要です。

①未成年者の場合

●保険加入の同意確認・・・未成年者本人と面接し、本人確認を行ったうえで、保険加入の同意確認をします。

●法定代理人・・・未成年者が法律行為をする場合は、法定代理人(親権者または未成年後見人)の同意が必要です。同意の必要な法律行為としては、保険契約の申込み、被保険者としての加入の同意などです。契約後の保全手続きや、保険金や給付金の請求手続きも法定代理人の同意が必要です。<>>

●留意点・・・負担する保険料に無理がないか、保険金額が妥当かなど、契約の内容についても十分に留意します。


(2)意向確認書面

●意向確認書面・・・契約締結前の段階において、お客さまの最終的な意向と契約の申込みを行おうとする保険契約の内容が合致しているかどうかを「意向確認書面」を作成し、確認(=意向確認)します。

●公的保険制度の情報提供・・・お客さまが必要な保障を検討するため、公的年金の受取試算額などの公的保険制度についての情報提供を適切に行うことも必要です。

●意向確認後、意向確認書面をお客さまに交付し、その控えを生命保険会社に保存します。

●意向確認書面の記載事項
①お客さま意向に関する情報
②保険契約の内容が当該意向とどのように対応しているか
③その他お客さま意向に関して特に記載すべき事項
④生命保険募集人等の氏名・名称


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