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●3つの保証・・・コンサルタントとして、設計販売を行っていく際、不可欠な要素となるものに、①個人で準備する保障(個人保障)、②勤務先での保障(企業保障)、③国などによる保障(社会保障)があり、各々について十分な知識を身につけておく必要があります。
●社会保障は不十分・・・社会保障制度は経済準備手段として重要な位置を占めていますが、その給付水準は必ずしも個々の経済的ニーズを満たしているとはいえません。
●自助努力の必要性・・・社会保障制度とのかかわり合いのもとに自助努力による経済準備を進める必要性が増しています。
●企業の人材確保のために・・・企業が優秀な人材を確保するには、魅力的な労働条件を整えることが必要です。このような労働条件の要素のひとつになるのが、企業の福利厚生制度であり、企業では制度の充実を真剣に考える必要に迫られています。
Ⅰ.社会保障制度
1.社会保障制度のあらまし
●社会保障制度・・・病気、老齢、死亡、出産、けが、失業、介護、貧困などの場合に、国や地方公共団体などが一定水準の保証を行うもの。
●社会保障制度の種類・・・大別すると、社会保障制度、公的扶助制度、社会扶助制度、社会福祉制度などがあります。
(1)社会保障制度
私たちは、病気、けが、死亡、会社倒産などによる失業の可能性があり、さらに平均寿命の延びに伴い、老後に対する経済的不安が増大しています。このような場合に各種の給付を行い、生活困窮を防ぎ、一定水準の生活を保障する制度。社会保障制度の中核でもあります。
(2)公的扶助制度
「生活保護法」にもとづき、生活に困窮する人々を対象に、その程度に応じて保護を行い、最低限度の生活を保障するとともに、その自立を手助けする生活保護制度などがあります。
(3)社会位扶助制度
「児童手当法」にもとづき、児童を養育している者に児童手当を支給することにより、家庭等における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健やかな成長に資することを目的とした児童手当制度などがあります。
(4)社会福祉制度
老齢者、身体障害者、知的障害者、児童および母子世帯の福祉を図ることを目的とした制度があります。
2.社会保険制度の主な内容
●社会保険制度・・・社会保障制度の中核で、病気、老齢、死亡、出産、けが、失業、介護などの給付内容については、生活設計上不可欠な知識といえます。
●社会保険制度の種類・・・医療保険(健康保険・国民健康保険・後期高齢者医療制度など)、介護保険、労働保険、(労災保険・雇用保険)などがあります。
(1)医療保険制度
被保険者などの病気、けが、死亡または出産などの経済的損失について保険給付を行う制度。特に対象者が多い健康保険と国民健康保険、後期高齢者医療制度については、以下のとおり。
①健康保険・・・被保険者が、収入に応じて保険料を出し合い、これに事業主の負担も加えて、被保険者の病気、けが、死亡、出産に関する保険給付(労災適用分を除く)と、その被扶養者に対しての保険給付を行います。
・2つの制度・・・主に中小企業の勤労者が加入している「全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)」と、従業員規模等の一定の条件を満たす企業がその従業員とともに健康保険組合をつくり、全国健康保険協会に代わって独自の立場で健康保険の事業を運営する「組合鑑賞健康保険」があります。
②国民健康保険・・・健康保険、船員保険、共済組合などに加入している勤労者(被扶養者を含む)、および後期高齢者医療制度の対象者以外の人、すなわち原則75歳未満の自営業、自由業の人とその家族などを被保険者として、その病気、けが、死亡、出産に関する保険給付を行います。
・退職者医療制度・・・国民健康保険の中には、上記以外に退職者医療制度があります。健康保険の被保険者が定年退職すると、その多くは国民健康保険の被保険者となりますが、そのうち厚生年金保険の老齢給付を受けられる人とその被扶養者は、退職被保険者として退職者医療制度に加入することになっていましたが、平成26年度末で新規加入は廃止されました。
③後期高齢者医療制度
・高齢者医療制度・・・高齢社会の到来による医療費負担の問題や介護サービス等の連携の面から従来の老人保健制度の見直しを図ったもので、2008年(平成20年)4月から実施されました。
・対象者・・・これまでの医療保険(国民健康保険等)に継続加入する65歳以上75歳未満の前期高齢者と、「後期高齢者医療制度」の対象となる75歳以上の後期高齢者に区分されています。
・後期高齢者・・・75歳になるまで加入していた医療保険制度を脱退し、別の独立した後期高齢者医療制度の被保険者となります。
・運営主体・・・後期高齢者医療制度は、都道府県単位で全市(区)町村が加入する広域連合が運営主体となります。
・負担額・・・医療費の負担額は、その費用の原則1割、所定水準以上の所得者の場合は2割(そのうち現役並み所得者は3割)。
・制度の目的・・・現役世代と高齢者が能力に応じた公平な保険料負担により、高齢者の医療費を安定的に支え、また、高齢者にふさわしい医療の提供とその質的な向上を目指しています。
(2)公的年金制度
●公的年金制度の役割と推移・・・日本は現在、諸外国に例をみないスピードで高齢化が進んでおり、公的年金制度の役割が一層重要になっています。また昭和30年代に体系化された制度も、その前提となる社会経済状況に大きな変化があり、将来にわたる安定的な制度運営の確保が必要となってきました。そこで1986年(昭和61年)4月に、従来の公的年金制度が大幅に改正されました。
●公的年金制度改正の骨子・・・①制度体系の再編成と共通の基礎年金の導入、②適正給付・適正負担の実現、③女性の年金権の確立。
●国民皆年金の原則・・・上記の改正の結果、国民のだれもが共通の国民年金に加入し、基礎年金が支給されるという国民皆年金の原則が確立されました。
●直近の改正・・・2004年(平成16年)度に改正が行われ、公的年金の保険料の引上げ、給付額の伸びの調整や年金分割など数多くの改正点があり、順次適用されています。
●公的年金制度の仕組み・・・国民年金からは、すべての国民に共通する基礎年金が支給され、会社員等に対しては、厚生年金保険から基礎年金に上乗せする報酬比例の年金が支給されました。また、会社員等の被扶養配偶者は第3号被保険者として国民年金に全員が加入する仕組みになっています。
●年金給付・・・これらの公的年金制度には、次の3つの年金給付があり、本人およびその家族(遺族)の生活の安定を図ることを目的としています。
・老齢を原因とするもの(老齢年金)
・障害を原因とするもの(障害年金)
・死亡を原因とするもの(遺族年金)
これらの公的年金の給付と保険料負担については、世代間扶養の考え方を取り込んで運営されています。
①国民年金
●老後生活を守る最も基本的な経済準備・・・私たちの生活、特に老後の生活を守る最も基本的な経済準備は国民年金であり、原則として20歳以上60歳未満のすべての国民が国民年金の被保険者となります。
・基礎年金の種類・・・国民年金から支給される基礎年金には、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金の3種類があります。
・保険料の負担・・・国民年金の保険料については、自営業者や自由業者とその配偶者などは、個々に納めることになっています。会社員等およびその被扶養配偶者は、本人と配偶者の基礎年金に必要な費用を厚生年金保険の保険料に含めて納めており、集められた保険料から一定額が国民年金に拠出されています。そのため、国民年金の保険料を個別に負担する必要はありません。
●基礎年金
【国民年金】
■第1号被保険者:農業・自営業者・学生など日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人
■第2号被保険者:厚生年金保険の加入者本人で原則として70歳未満の人(65歳以上の年金受給者を除く)
■第3号被保険者:第2号被保険者の被扶養配偶者で20歳以上60歳未満の人
②厚生年金保険
●基礎年金の受給・・・厚生年金保険の被保険者は、国民年金にも加入しているので、国民年金からも老齢・障害・遺族の基礎年金を受けることになります。
●二階建の年金・・・厚生年金保険の老齢年金は、原則として、基礎年金の受給資格期間を満たした場合に、国民年金の基礎年金に上乗せする報酬比例の年金、すなわち”二階建の年金”として支給されます。
●厚生年金保険から支給される給付・・・老齢厚生年金、障害厚生年金および障害手当金、遺族厚生年金があります。
●保険料・・・毎月の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)に対して一定の保険料率が決められており、本人と事業主等が折半します。
③国民年金基金・・・従来基礎年金しか受給できなかった自営業者などが、ゆとりある老後を過ごすことができるように、基礎年金の上乗せ給付を行う任意加入の年金制度。
・基金の種類・・・全国に1つ設立された「全国国民年金基金」と、3つの職種別に設立された「職能型国民年金基金」は基金ごとに定められた事業または業務に従事する人が加入でき、「全国国民年金基金」には、住所や職業を問わず加入できます。
・加入資格・・・20歳以上60歳未満の国民年金の第1号被保険者(農業・自営業者など)および60歳以上65歳未満の人や海外に居住している人で、国民年金に任意加入している人、加入に際しては、口数制によって年金額や給付の型を加入者が選択できます。
(3)介護保険制度
●介護保険制度・・・高齢化の進展に伴い、介護を必要とする寝たきりや認知症の高齢者が急増することが見込まれています。こうした中で、高齢者介護を社会的に支える仕組みとして2000年(平成12年)4月に、介護保険制度が創設されました。
●保険給付・・・要件として「介護(支援)を必要とする状態である」との認定を受けることが必要で、その保険給付は、原則、利用者に対する介護サービスという現物給付の方式になっています。
●保険料・・・第1号被保険者は市(区)町村ごとに所得に応じた定額保険料で、第2号被保険者は加入している医療保険制度ごとに収入より決定され、医療保険の保険料と合わせて徴収されます。給付に必要な費用の半分は公費(税金等)でまかないます。
●制度の概要
■保険者:市(区)町村
■被保険者:第1号被保険者→65歳以上の者/第2号被保険者→40歳以上65歳未満の医療保険加入者
■保険給付の要件:所定の要介護状態または要支援状態
■保険給付の内容
(1)介護給付サービス
「居宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」
(2)予防給付サービス
「介護予防サービス」「地域密着型介護予防サービス」
■利用者負担:所得に応じて介護サービス費用の1割、2割または3割
(4)労働保険制度
労働保険とは、労災保険(労働者災害補償保険)と雇用保険を総称したもの。
①労災保険(労働者災害補償保険)・・・業務上または通勤途上における労働者の負傷・疾病・障害または死亡に対して保険給付を行い、また、負傷、疾病にかかった労働者の社会復帰の促進を図る制度です。
・費用の負担・・・事業主が負担する保険料と、国の補助によってまかなわれています。
②雇用保険における失業等給付・・・「求職者給付」や「就職促進給付」等があります。
・求職者給付・・・被保険者が離職し失業状態にある場合に、失業者の生活の安定を図るとともに求職活動を容易にすることを目的として支給され、その代表的なものに「基本手当」があります。
・就職促進給付・・・失業者が再就職するのを援助・促進することを目的として支給され、「就業促進手当」等があります。
Ⅱ.企業保障制度
1.企業保障制度と生命保険
●従業員および役員のための企業保障制度の主なものは、在職中の生活保障、定年退職後の老後生活保障、従業員の財産形成であり、それぞれに保険商品が活用されています。
2.総合福祉団体定期保険・団体定期保険
●利用目的・・・企業は、企業負担による死亡退職金・弔慰金制度、労働災害による上乗せ給付等の遺族保障を充実させるとともに、従業員の負担による比較的低廉で加入手続きも簡単な任意加入の遺族保障制度を提供しています。これらに対応する商品として保険料企業負担による原則として全員加入の総合福祉団体定期保険と、保険料従業員負担による任意加入の団体的保険があります。
(1)総合福祉団体定期保険の仕組み
●従業員および役員の死亡または所定の高度障害に対して保険金を支払う1年更新の定期保険で、企業の福利厚生規定による従業員等の遺族保障の支払い財源の確保を目的としています。
●対象と区分・・・対象となる団体は、企業、協同組合などで、第I種から第Ⅳ種の4種類に区分されています。この4種類のどれに該当するか、また総合福祉団体定期保険か団体定期保険かによって、保険料率や保険金額の制限、最低被保険者数などが決められています。
●第Ⅰ種団体・・・総合福祉団体定期保険の第Ⅰ種団体(被用者団体、職域組合団体)の最低被保険者数は10名。
●告知扱・・・被保険者の選択はすべて告知扱になり、健康で正常に勤務していれば加入できます。
●配当金・・・毎年、団体ごとに収支決算を行い、剰余金が生じたときには支払います。
●契約形態・・・契約者=企業(団体)、被保険者=従業員および役員、受取人=被保険者の遺族または企業(団体)
(2)総合福祉団体定期保険の特約
①ヒューマン・ヴァリュー特約・・・従業員等の死亡または高度障害に伴い企業が負担する諸費用(代替雇用者採用・育成費等)を保証するための特約で、企業(団体)が保険金を受け取ります。
②災害総合保障特約・・・企業の福利厚生規程にもとづいて、従業員等が不慮の事故により身体に障害を受けた場合、または傷害の治療を目的として入院した場合に給付金を支払う特約。
(3)総合福祉団体定期保険の利点
●手続きが簡単・・・告知扱なので加入手続きが簡単(ただし、加入に際しては被保険者の同意が必要)。
●保険金の支払い・・・業務上・業務外を問わず、死亡・高度障害になった場合に保険金を支払います。
●割安な保険料・・・保険料は、その年度の死亡保険料と付加保険料だけで計算されるが、一括して販売し管理されるため、付加保険料は少なくてすみ、個人保険に比べて割安です。
●企業が負担した保険料・・・原則として全額が損金算入(個人事業主は必要経費算入)できます。
・従業員に対する課税・・・給与所得としての課税はありません。
3.経営者保険
●経営者保険・・・経営者に万一のことがあった場合に、企業の被る有形、無形の損失は計り知れないものがあります。これらの問題を解決し、企業にとってかけがえのない経営者の生活保障、企業の成長発展に役立つ保険です。
●保険種類・・・一般の個人保険(養老保険、定期保険特約付養老保険、定期保険、終身保険、定期保険特約付終身保険、個人年金保険など)と同じ(財形商品を除く。)
●主な契約形態・・・契約者=企業(団体)、被保険者=役員および幹部従業員、受取人=企業(団体)
4.医療保障保険(団体型)
●発売の目的・・・健康保険の本人一部負担制と保険給付対象外費用の増加などに対応し、公的医療保険制度の補完を目的とした企業(団体)向け商品。
●給付内容・・・治療給付金、入院給付金および死亡保険金があります。
5.主な企業年金制度
●退職金制度・・・退職金制度には、支給方法により退職一時金制度、退職年金制度およびその併用があります。退職一時金制度は、従来退職金制度の中心でしたが、近年では退職年金制度と併用する企業が多くなってきています。
●退職金制度の財源を準備する手段として、これまでは将来の受取額が確定している確定給付型の企業年金制度等が利用されてきましたが、積立資金の運用難、新会計基準の導入や雇用の流動化等の企業年金制度を取り巻く環境の変化に伴い、新しい企業年金制度の導入が求められるようになってきました。
●確定拠出年金の導入・・・2001年(平成13年)10月に「確定拠出年金法」が施行され、拠出額(掛金)が一定で受取額が運用結果によって変動する確定拠出年金が導入されました。
●その後、「確定拠出年金法」が改正(2017年(平成29年)1月施行)され、個人型確定拠出年金の加入者の範囲が拡大されました。
●従来の確定給付型の企業年金についても、受給権保護等を目的とした「確定給付金企業年金法」が2002年(平成14年)4月に施行され、企業年金制度が大きな変革を遂げつつあります。
(1)確定拠出年金制度
●確定拠出年金では、あらかじめ決まった掛金を払い込み、加入者自身が掛金の運用方法を選択し、運用実績次第で受け取る年金額が変動します。
●「企業型」と「個人型」・・・確定拠出年金には、企業が従業員のために掛金を払う「企業型」と、加入者自身が掛金を払う「個人型」があります。
確定拠出年金制度の主な仕組み
・加入対象・・・「企業型」に加入できるのは、「企業型」を実施している企業に勤務する70歳未満の人(国民年金の第2号被保険者)で、「個人型」に加入できるのは、日本国内に居住している20歳以上65歳未満の自営業者などの国民年金の第1号被保険者、65歳未満の厚生年金保険の被保険者である会社員や公務員(国民年金の第2号被保険者)、第2号被保険者の被扶養配偶者(国民年金の第3号被保険者)です。
・運用商品の選択・・・「企業型」の場合、会社が用意した原則3本以上35本以下の運用商品(預貯金・株式・投資信託・保険等)の中から、加入者本人が自己責任原則のもとで商品を選択することになります。そのため、株式などのリスクの高い商品を選択すると、運用結果によっては元本割れの可能性がありますが、企業は掛金の負担だけで元本を補てんする義務はありません。
・ポータビリティ・・・加入者が転職・離職した際に、自分の年金資産を転職先の確定拠出年金や個人型確定拠出年金に移換できる「ポータビリティ」という仕組みがあります。
・税務上の取扱い・・・掛金は企業が支払った場合は全額損金算入、個人の場合は全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象になります。個人が老齢給付金を年金で受け取る場合は雑所得(「公的年金等控除」の適用あり)となり、一時金で受け取る場合は「退職所得課税」が適用されます。
・給付・・・「老齢給付金」「障害給付金」および「死亡一時金」があります。
(2)確定給付型の企業年金制度
●従来の確定給付型の企業年金制度・・・従来、確定給付型の企業年金制度には、「厚生年金基金」「適格退職年金」などがありました。
●確定給付企業年金法・・・2002年(平成14年)4月より「確定給付企業年金法」が施行されたことにより、「基金型企業年金」と「規約型企業年金」が導入されました。
●厚生年金基金の新設廃止・・・2014年(平成26年)4月以降新規の設立はできません。既存の基金についても代行返上して確定給付企業年金に移行するか解散するかが促されています。
●課税関係・・・掛金は企業が支払った場合は全額損金算入、個人の場合は、基金型企業年金、規約型企業年金では一般生命保険料控除の対象、厚生年金基金では社会保険料控除の対象。給付金の課税関係は、原則、確定拠出年金制度と同様です。
①厚生年金基金・・・厚生年金保険の老齢厚生年金(報酬比例部分)の一部を国に代行して運営し、さらに企業独自の年金給付を代行部分に上乗せすることにより、厚生年金保険よりも手厚い給付を行うことを目的とした制度です。
②基金型企業年金・・・厚生年金基金のように厚生年金保険の代行部分と企業独自の上乗せ部分の両方を運営するのではなく、企業独自の上乗せ部分のみの運営を行います。導入にあたっては、母体企業とは別の法人格をもった基金を設立したうえで、基金において年金資産を管理・運用し、年金給付を行います。
③規約型企業年金・・・「適格退職年金」を改良して創設されたもので、労使が同意した年金契約にもとづいて、企業と生命保険会社や信託銀行などが契約を締結し、母体企業の外で年金資産を管理・運用し、年金給付を行います。
6.財形制度
●企業の行う財産形成制度・・・持家制度、社内預金制度ならびに勤労者財産形成促進法にもとづく財形貯蓄制度や財形給付金(基金)制度があります。
●財産形成制度・・・勤労者財産形成促進法にもとづき、従業員・事業主・国が一体となり従業員の財産づくりを促進するための制度。
●保険種類・・・財形貯蓄積立保険・財形住宅貯蓄積立保険・財形年金積立保険・財形給付金保険・財形基金保険があります。
●優遇措置・・・この制度に加入すると、次の優遇制度が受けられます。
・財形住宅貯蓄積立保険・・・払込保険料累計額550万円までの利子相当分が非課税(ただし、財形年金積立保険と合算)。
・財形年金積立保険・・・払込保険料累計額385万円までの利子相当分が非課税。
・持家の建設・分譲、住宅の購入のための貸付制度・・・一定の要件を満たせば、独立行政法人勤労者退職金共済機構などから融資が受けられます。
●保険料の負担・・・①従業員が保険料を負担する財形貯蓄積立保険・財形住宅貯蓄積立保険・財形年金積立保険と、②企業が保険料を負担する財形給付金保険・財形基金保険があります。
●財形制度にもとづく商品の取り扱い・・・他の金融機関も取り扱いますが、生命保険会社の商品とは内容が異なります。
●予定利率の変更・・・財形制度にもとづく保険は、多くの個人保険とは異なり、積立金等の計算基礎(予定利率)が積立期間中および据置期間中でも変更される場合があります。
●お客さまへの説明・・・パンフレット等の募集資料における積立金額および支払年金額等の説明において「受領額が保証される」等の誤解が生じないよう十分留意し、また元本割れを生じる場合、元本割れ期間を説明する必要があります。
>>第7章 生命保険と税・相続